SMC(Smart Money Concepts)は機関投資家っぽい動きを価格構造から読む概念群です。ICT(Inner Circle Trader)として知られるMichael Huddlestonの教育コンテンツ経由で広まりました。必勝法の名前ではありません。
最初はFVGとオーダーブロックだけ見て「それっぽい四角」をチャートに塗りまくっていたら、画面が緑と赤の四角だらけになってどれが有効なのか全然分からなくなった——という経験をする人が多いです。四角を引けば終わりではなく、どの構造の中で出てきたかが先です。(全部塗るとどれも意味がないと気づくまで時間がかかった)
SMCの主要概念を土台から整理する
1. Market Structure(市場構造)— ここが土台
高値と安値の切り上げ(Higher High・Higher Low)、切り下げ(Lower Low・Lower High)で今の流れを見ます。ここが曖昧だと他の用語も全部ふわっとします。
- 上昇構造:前回高値を超えた(BOS)→ 押し目が前回安値より上で止まった(HL形成)→ さらに上昇
- 下降構造:前回安値を割った(BOS)→ 戻りが前回高値より下で止まった(LH形成)→ さらに下落
- 構造転換(CHoCH):上昇構造中に初めて直近安値を割った(逆方向への転換の可能性)
これができてから初めて、FVGやオーダーブロックの有効性を判断できます。
2. Liquidity(流動性)— 価格はどこに向かうか
多くの注文が集まりやすい場所の考え方です。直近高値の少し上には「上に抜けたら買おう」という逆指値買い注文、安値の少し下には「割ったら損切り」という逆指値売り注文が溜まりやすいです。
SMCでは、価格がこういった注文の集まり(流動性)を吸収しに行く動きを重視します。「高値を少し超えたと思ったら反転した」のは、上に溜まっていた逆指値を刈り取って(Liquidity Sweep)下げに転じた、と読む考え方です。
- Buy-Side Liquidity(買い側流動性):直近高値の上に溜まっている逆指値買い・利確注文
- Sell-Side Liquidity(売り側流動性):直近安値の下に溜まっている逆指値売り・損切り注文
- Equal Highs・Equal Lows(同値高安):同じ水準が2回以上形成された場所。特に注文が集まりやすい
3. Fair Value Gap(FVG)— 不均衡の痕跡
値が一気に走ったことで途中のやり取りが薄く見える部分です。3本足で見たとき、1本目の高値と3本目の安値が重ならずギャップができている状態がFVGです。
価格があとでそこを埋めに来る、と語られることが多いです。ただし「必ず埋める」わけではなく、強いトレンドのときは埋めずに進むこともあります。FVGに戻ってくる可能性がある観察ポイントとして使う方が現実的です。
- 強気FVG(Bullish FVG):1本目の高値と3本目の安値に空白がある。上昇方向の押し目買い候補
- 弱気FVG(Bearish FVG):1本目の安値と3本目の高値に空白がある。下降方向の戻り売り候補
- CE(Consequent Encroachment):FVGの50%水準。最も反応しやすいレベルとして扱われる
4. Order Block(オーダーブロック)— 大口の痕跡
価格が大きく動く直前のまとまりを重要な供給・需要の痕跡として見る考え方です。上昇が始まった直前の下落ローソク足がオーダーブロック(需要ゾーン)、下落が始まった直前の上昇ローソク足が供給ゾーンとして参照されやすいです。
四角を引けば終わりではありません。どの構造の中で出てきたかが先です。上昇構造の中でのOBへの押しは有効に見えやすいですが、構造が転換しかけているときは機能しないことが多いです。
BOSとCHoCH——構造変化を読む2つのシグナル
BOS(Break of Structure)
現在の市場構造のトレンド方向へ、前回の重要高値(または安値)を更新した状態です。上昇構造なら前回高値を更新するBOS。トレンド継続の確認として使います。
CHoCH(Change of Character)
トレンドの性格が変化した最初の兆候です。上昇構造中に、前回のローカル安値を実体で割り込むことがCHoCH(弱気)です。BOSはトレンド継続、CHoCHは反転の初期兆候という違いがあります。
SMCを使うときに知っておくこと
全部のFVGとOBを有効として扱わない
チャートに表示すると大量のFVGとOBが出ます。これらを全部エントリー候補として扱うと機能しないゾーンだらけになります。有効なものの条件:流動性取得後に形成、強いディスプレイスメントを伴う、BOS/CHoCH後に形成、上位足のバイアスと一致、ロンドン/NYのキルゾーン内で形成。
上位足から下位足への分析手順
日足・4時間足でバイアス(強気か弱気か)と流動性ターゲットを決め、1時間足・15分足でセットアップを待ち、5分足・1分足で実行するというトップダウン分析が基本です。下位足だけ見てOBに入るのは、上位足の流れを無視した状態でのエントリーになります。
SMCはワイコフ理論と共通点が多い
SMCの「流動性を取る動き」はワイコフのスプリング・アップスラストと似た概念です。「構造転換(CHoCH)を確認してから入る」は「Sign of Strengthを確認してから入る」に近いです。どちらも「大口が動く理由と構造」を読もうとする考え方です。